花椿との外出

子供を産んだ後、最初は立ち上がれない。 

少したつと立てるようになって、そのうち歩けるようになって、自分でトイレに行けるようになって、シャワーに入れるようになって。 

子供をだっこした状態で部屋を歩けるようになり、少し重たいものが持ち運べるようになる。 

そして子供を抱えて外に出かけることができるようになる。

子供を産むまで気がついていなかったんだけど、外を自由に歩きたいように歩くっていうのは、私にとってとても大切なことだったようだ。

初めて花椿をベビーカーに入れて町を一人で歩いたときの開放感と、自分の回復への達成感は、まるで長かった妊娠期間とお産期間がやっと終わったような気分にさせてくれた。 

散歩を再会しはじめてから、はじめてカフェでリラックスできたとき、公園でのんびりできたとき、ショッピングモールで行きたかったお店数軒に行けたときと、いろんな小さなマイルストーンがあった。 その度に少しずつ自分が自分に戻っていった感覚があった。 失われていたピースがどんどん戻ってくる感覚があった。

その中で一番大きな感動は、美術館に行ったときにあった。 

初めて花椿と美術館に行って、見たかった作品の前に立ったとき、いろんなレイヤーでの感動があって涙が出た。 

素晴らしい作品だったこと。 

それを娘と見れていること。 

自分がの体が娘とここに来れるぐらいにぐらいに回復したこと。

人生が戻ってきた、魂が救済されたと感じた瞬間だった。

あぁ、私は子供を産んで、その子と散歩に出かけたかったんだ。 美術館に行きたかったんだ。 命をかけて夢を叶えたんだと感動した。

次に美術館に行ったときは、もうそれは新しい日常になっていた。

でも美術館の空間の隅々に、最初に感じた私の感動が残っている感じがした。 例えば、二十年後にここに戻ってきたときに、息を吸った瞬間に、その感動が体内に戻ってくるんだろうと思える、そんな質の感動だった。

散歩は自由とか、独立感とか、自信とか、そういうった自分の精神にとても大切なものが、たくさん体に戻してくれた。 そして美術館での散歩は、それらの感情を体内で整えて並べてくれた感じだった。 自分の魂が整った感じがした。

これから私の一生をかけて、子供と町を歩き、町で遊べるんだ。 楽しみでしょうがない。

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